留学生の採用を検討している企業から「卒業後にそのまま特定技能で働かせたい」という相談は増えています。一方で、切替(在留資格変更)前後の動き方を間違えると、不法就労・不法就労助長につながり得るため、企業側・本人側それぞれで“地雷ポイント”を押さえておく必要があります。

1. 企業としての注意点(採用側のチェックリスト)

(1)「許可前にフルタイム就労」させない

留学中は原則として学業が本分で、就労は資格外活動許可の範囲(例:週28時間等)に制限されます。在留資格が「特定技能」に切り替わる前に、実質フルタイム就労させる運用は原則としてしてはいけません。(一部除外期間あり)
採用内定〜就労開始日の設計(いつから働けるのか)を、在留資格変更の進捗とセットで管理してください。

(2)「分野が合っているか」が最重要(何でも働けるわけではない)

特定技能は分野(特定産業分野)ごとに従事できる業務が決まっています。求人票・職務内容が分野の業務範囲とズレると、許可が出ない/後から是正対象になり得ます。
さらに分野によっては、別途の手続(例:建設分野の計画等)など追加要件が絡むことがあります(分野別運用の確認が必須)。

(3)技能試験・日本語試験の「合格証明」を必ず押さえる

原則として、特定技能で働くには技能試験+日本語試験が必要です(免除扱いの例外がある場合も)。企業側は「本人が受かったと言っている」ではなく、証明書の原本・写しの回収までを運用に組み込むのが安全です。

(4)1号受入れなら「支援計画」が必須(外注するなら登録支援機関)

特定技能1号を受け入れる場合、企業は1号特定技能外国人支援計画を作成し、申請時に提出する必要があります。自社で支援体制を組めない場合は、登録支援機関への委託も選択肢です。

(5)申請・届出の“様式運用”が頻繁に更新される

特定技能は、申請・届出様式が体系的に公開されており、最新版様式での提出が基本です。社内で古い雛形が回っているとミスが起きやすいので、都度公式の様式一覧から引く運用が安全です。


2. 外国人本人としての注意点(本人に必ず説明したいこと)

(1)「卒業時期」と「在留期限」を先に見る(申請が集中する時期あり)

留学生の特定技能への移行は、卒業シーズンに申請が集中しやすく、早めの準備が推奨されています。卒業・就職・在留期限の3点を並べて、いつ何を出すか逆算が必要です。

(2)試験に受かっていないと基本的に進めない

特定技能は「就職内定」だけでは足りず、必要な技能試験・日本語試験に合格していることが原則要件です(例外的な試験免除枠があるケースも、該当性の確認が必要)。

(3)切替前に“働き方”を崩さない(資格外活動の範囲)

内定後に「研修」「試用」「手伝い」などの名目で実質フルタイム就労してしまうと、本人側にも不利益が生じ得ます。在留資格が切り替わるまでは、留学としてのルール遵守が大前提です。

(4)間に合わない時の“つなぎ”制度を知っておく

卒業後すぐに特定技能へ移行できない場合に備え、一定の要件のもとで**「特定技能1号への移行希望者向けの特定活動」**という選択肢が案内されています(就労可否・期間などは要件確認が必須)。


3. 行政書士ができること(企業価値に直結する支援メニュー例)

(1)全体設計:いつ・何を・誰が出すか(採用〜就労開始の工程表)

「内定→卒業→試験→雇用契約→支援計画→変更申請→就労開始」までを、在留期限と試験日程に合わせて工程化し、企業の人事・現場が迷わない形に落とし込みます。
公式の申請類型・様式に沿って進められるのが強みです。

(2)申請書類の作成・取次(在留資格変更許可申請)

在留資格「特定技能」の変更申請は、申請書(変更許可申請書)や添付書類一式の整合が肝です。行政書士は、要件の当てはめ・疎明資料の組み立て・様式チェックを通じて、差戻しリスクを下げます。

(3)支援計画の設計/登録支援機関との連携スキーム作り

1号受入れでは支援計画が必須です。
行政書士として、企業が自社実施する範囲/委託する範囲を整理し、登録支援機関との契約・運用(支援責任者・担当者の設計、記録の取り方など)まで含めて実務に落とします。

(4)「分野適合」チェック(職務内容・配属・契約条件の整合)

求人内容が分野の範囲とズレていると、許可が出ない/後から運用破綻します。行政書士が、業務内容・雇用条件・体制を分野要件に寄せる形でレビューし、必要に応じて記載修正の助言を行えます。


まとめ:切替は「許可が出てからがスタート」

留学→特定技能は可能ですが、実務の落とし穴はだいたい次の3つです。

  • 許可前に働かせてしまう(スケジュール設計ミス)
  • 分野・職務内容が合っていない(適合性ミス)
  • 支援計画・体制が形だけ(運用ミス)

企業にとっては“採用の成功”だけでなく、受入れ後の継続雇用とコンプライアンスが本番です。行政書士としては、申請だけでなく「制度に沿った運用設計」まで支援することで、企業側の安心感が一段上がります。

投稿者プロフィール

増田良和
増田良和